企業で進むダイバーシティってなに?
多様な人間が一緒に働くことで組織を活性化させること
ダイバーシティ(Diversity)という言葉を一度は聞いたことがあると思います。通常「多様性」と訳され、企業経営においては人種・民族・国籍・性別・年齢を問わず人材活用する「人材と働き方の多様化(多様性)」を意味します。
以前は社会的マイノリティと言われる人たち(ここでは人種・民族・国籍・性別・年齢などを理由に差別を受ける人)の人権尊重や法令順守を含めた就業機会拡大を意図して使われることが中心だったのですが、現在は多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメントのことで使われることが多くなりました。
その多様性は、生活環境・バックグラウンド・宗教・生き方・価値観・性格・嗜好など私的な面から、働くという面では、雇用形態などの働く条件の違いなども含まれます。
ダイバーシティ・マネジメントとは、多様な人材の雇用や勤務を可能とし、活かす職場環境づくりのシステムを意味します。
この多様性がこれからの日本企業の進むべき方向性を表わす1つのキーワードになると言われています。ビジネスのグローバル化に伴い、これまでのように画一的な価値観、例えば競争優位や組織のパフォーマンス向上などだけで企業運営をしていては、多様化する市場ニーズをくみ取ることはできません。
そこで、多くの企業に求められているのが多様な価値観や考え方、そして能力をもつ社員たちなのです。
ここでいう多様性とは、異なる人々を多く受け入れて組織を活性化させようというものです。つまり、多様な背景や価値観をもつ人々が共に働くことによって、新たな商品やサービスの開発などに役立てるものです。
障害者の観点を活かした商品開発なども行われる
では、企業のダイバーシティの中で障害のある社員が果たす役割にはどんなものがあるのでしょうか?
例えば、ユニバーサルデザイン(※1)を施した商品を開発する上で、障害者の実体験や意見がとても重要になります。
パソコンやタブレットの開発などでも「視力や聴力が低下している人にも使いやすいデザインはどんなものなのか?」を考える際に、障害者の経験は開発のための大切なヒントになります。
同じように下肢障害などがある方に意見を聞きながら、インテリアやオフィス周りの商品を開発することも可能でしょう。
事実、障害のある社員にプロジェクト・メンバーとして参加してもらい、新商品やサービス開発に取り組む企業は増えています。
現在、多くの企業がダイバーシティを重視する背景には、有能な人材の発掘、斬新なアイデアの喚起、社会の多様なニーズへの対応といった狙いがあります。
それは障害者の活躍する分野が広がり、働く環境がより整備されることにもなるのです。 一方で、障害者と一緒に働き始めるとき、事業主はもとより、上司、同僚など周囲の障害への理解や提供される「合理的配慮(※2)」が必要不可欠になります。
そのためには、既存の組織文化と制度の見直しや変革も時には必要となるでしょう。職場全体で「合理的配慮」を理解した上で、互いに情報共有や円滑なコミュニケーションを図ることができれば、ダイバーシティを実現することができるのではないでしょうか。
民間企業に求職活動をしている方で、もし希望する企業などがあればダイバーシティに対する取り組みを事前に確認してみると良いかもしれません。
※1ユニバーサルデザイン(Universal Design/UD):文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることをめざした建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のこと。
※2「合理的配慮」について詳しく知りたい方は併せて『障害者雇用促進法の「合理的配慮指針」とは?』をご参照ください。