障害者雇用における合理的配慮を考える
障害者雇用における合理的配慮とは?
改正障害者雇用促進法の施行に伴い、雇用における障害者に対する合理的配慮の提供が義務化されてから、3年が経ちました。今日、障害者の雇用数が年々増加している中、改めて職場状況に応じた障害者と事業主の相互理解が求められています。お互いが気持ち良く働くためにも、合理的配慮は重要な要素だといえます。
「合理的配慮」というのは、募集および採用時においては、障害者と障害者でない人との均等な機会を確保するための措置のことをいい、採用後においては、障がいと障害者でない人との均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置のことをいいます。
障害の種類によっては、見た目だけではどのような支障があり、どのような配慮が必要なのかわからない場合があります。また、障害部位・等級が同じ場合であっても、障害者一人ひとりの状態や職場環境などによって、求められる配慮は異なり、多様で個別性が高いものである点に留意が必要だといえます。具体的にどのような措置をとるかについては、障害者と事業主とでよく話し合った上で決める必要がありますが、具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
【募集・採用時】
■視覚障害がある人に対し、点字や音声などで採用試験を行う。
■聴覚・言語障害がある人に対し、筆談などで面接を行う。
【採用後】
■肢体不自由がある人に対し、机の高さを調節するなど、作業を可能にする工夫を行う。
■知的障害がある人に対し、図などを活用した業務マニュアルを作成したり、業務指示は内容を明確にして一つずつ行なったりするなど作業手順を分かりやすく示す。
■精神障害がある人などに対し、出退勤時刻・休暇・休憩に関して通院・体調を配慮する。
事業主には、これらの措置を過重な負担にならない範囲で提供する義務があります。過重な負担については、以下の6つの要素を総合的に勘案し、個別に判断します。
■事業活動への影響の程度
■実現困難度
■費用負担の程度
■企業の規模
■企業の財務状況
■公的支援の有無
神奈川県では、合理的配慮についての合同研修会を開催
合理的配慮は障害者一人ひとりの状態や、職場の状況などに応じて求められる内容が異なります。そのため、障害者と事業主との相互理解を深めることが必要であり、神奈川県では、「障害者雇用における合理的配慮を考える」と題して企業・障害者就労支援機関合同研修会を開催しています。そして、企業・支援機関の両方の立場から、実際に行った合理的配慮について話を聞くことのできる機会を設けています。
2019年2月には、第3回目となる研修を海老名市で開催。プログラムは次のような内容で実施されました。
■障害者雇用における合理的配慮について
■企業として考える合理的配慮について
■就労支援機関として考える合理的配慮について
■社会保険労務士からの助言・質疑応答
■企業・就労支援機関交流会
企業や支援機関における、実際の合理的配慮について話を聞くことができ、また、社会保険労務士によるアドバイスを得ることもできます。多様な人が働きやすい職場環境の実現に向け、障害者の採用に積極的な事業主はもちろん、今後、障害者の採用に取り組もうと考えている事業主にも大いに参考になります。