厚生労働省が「障害者総合支援法」などの改正案を国会に提出
障がい者の多様な就労ニーズに対する支援強化を図る
厚生労働省は、10月26日、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」「障害者総合支援法」が14日に閣議決定されたことを受けて、その改正案を国会に提出しました。
厚生労働省のホームページによると、その概要は次の6つで構成されています。「障害者等の地域生活の支援体制の充実」「障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進」「精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備」「難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化」「障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病についてのデータベース(DB)に関する規定の整備」「その他」です。
まず、「障害者等の地域生活の支援体制の充実」においては、共同生活援助(グループホーム)の支援内容として、一人暮らしなどを希望する者に対する支援や退居後の相談などが含まれることを法律上明確化することや、障がい者が安心して地域生活を送れるよう地域の相談支援の中核的役割を担う基幹相談支援センターおよび緊急時の対応や施設などからの地域移行の推進を担う地域生活支援拠点などの整備を市町村の努力義務とする、などの内容が盛り込まれています。
次の「障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進」では、3つの施策を挙げています。1つは、就労アセスメント(就労系サービスの利用意向がある障がい者との協同による、就労ニーズの把握や能力・適性の評価および就労開始後の配慮事項などの整理)の手法を活用した「就労選択支援」を創設するとともに、ハローワークはこの支援を受けた者に対して、そのアセスメント結果を参考に職業指導などを実施するとあります。2つめは雇用義務の対象外である週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障がい者、重度知的障がい者および精神障がい者に対し、就労機会の拡大のため、実雇用率において算定できるようにすること。そして3つめが障がい者の雇用者数で評価する「障害者雇用調整金」などにおける支給方法を見直し、企業が実施する職場定着などの取り組みに対する助成措置を強化することを掲げています。
施行は一部を除いて2024年4月を予定
「精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備」においては、家族などが同意・不同意の意思表示を行わない場合にも、市町村長の同意により医療保護入院を行うことを可能とするなど、適切に医療を提供できるようにするほか、医療保護入院の入院期間を定め、入院中の医療保護入院者について、一定期間ごとに入院の要件の確認を行うことなどを新たに追加しています。
同様に「難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化」では、難病患者および小児慢性特定疾病児童などに対する医療費助成について、助成開始の時期を申請日から重症化したと診断された日に前倒しするなどの措置が追加されています。
そして「障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病についてのデータベース(DB)に関する規定の整備」では、障がいDB、難病DBおよび小慢DBについて、「障害福祉サービス」などや難病患者などの療養生活の質の向上に資するため、第三者提供の仕組みなどの規定を整備することが掲げられています。
最後の「その他」では、「市町村障害福祉計画」に整合した「障害福祉サービス」事業者の指定を行うため、都道府県知事が行う事業者指定の際に市町村長が意見を申し出る仕組みの創設と、地方分権提案への対応として居住地特例対象施設に介護保険施設を追加することなどが挙げられています。
このように今回の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」は、障がい者の住まいや働き方などの幅を広げることが柱に置かれています。厚生労働省では、12月10日の会期末までに成立をめざし、施行は一部を除き、2024年4月を予定しています。